「口コミが少なくて不安」「もっと星5の評価を増やしたい」——そう考えて、来院された患者様に口コミ投稿をお願いしたことがある先生は多いのではないでしょうか。実はこの「お願いの仕方」次第で、景品表示法のステルスマーケティング規制に抵触するリスクがあります。2025年には実際に、歯科医院が消費者庁から措置命令を受けた事例が報道されました。
何が起きたのか:歯列矯正歯科への措置命令
2025年3月18日、消費者庁は医療法人社団スマイルスクエアが運営する歯科医院に対し、景品表示法に基づく措置命令を出しました。報道によれば、同法人は2024年5月から9月にかけて、患者9人に対して5,000円相当のプリペイドカード、または治療費5,000円分の割引を提供し、その見返りとしてGoogleマップに最高評価(星5)の口コミを投稿するよう依頼していたとされています。院長自らが診察の場でこの依頼を行っていたことも確認されたと報じられています。
景品表示法は、事業者が広告であることを明示せずに、一般の口コミを装って自社の商品・サービスを宣伝する行為を「ステルスマーケティング」として規制しています(2023年10月施行)。今回のケースは、特典と引き換えに高評価の投稿を依頼していた点が、この規制に該当すると判断されました。
ポイントは「口コミを頼んだこと」自体ではなく、「金銭的な見返りと引き換えに、特定の評価内容(星5)を投稿するよう依頼したこと」です。単に「よろしければGoogleに口コミを書いていただけると嬉しいです」と伝えるだけであれば、この規制には該当しません。
歯科医院が注意すべき3つのライン
1. 金銭・割引と引き換えにしない
「口コミを書いてくれたら次回○円引き」「プレゼントを渡す」といった、投稿と引き換えの経済的利益の提供は避けるべきです。今回の事例でも、この「対価性」が問題視されました。
2. 評価内容を指定しない
「星5でお願いします」「良い内容で書いてください」など、投稿する評価や内容をこちらから指定することもリスクがあります。依頼するとしても「率直な感想を書いていただけると嬉しいです」という範囲にとどめるのが安全です。
3. スタッフ・業者による代行投稿はしない
患者様本人ではなくスタッフや家族名義での投稿、外部業者による偽の口コミ投稿は、ステルスマーケティング規制以前に、Googleの規約違反にも該当し、アカウント停止等のリスクもあります。
では、口コミを増やすにはどうすればいいのか
規制を恐れて口コミ依頼自体をやめる必要はありません。誠実な治療の結果として、患者様が「良かった」と感じたタイミングで、対価を伴わない形で投稿をお願いするのは問題ない方法です。院内掲示やスタッフからの一言で自然に依頼する、来院後のタイミングでSMS・LINE等で案内する、といった方法が一般的です。
そしてもう一つ大切なのが、すでに投稿されている口コミを正しく読み解き、院内の改善に活かすことです。口コミを「増やす・仕込む」よりも、既にある評価から「何が評価され、何が改善余地なのか」を把握し、次の一手につなげるほうが、規制リスクもなく、長期的には集患にも効果的です。